CT検査による被ばく線量算出方法について
事故をして病院に運ばれたら、お医者様に
「念のためにCTを撮っておきますか」
と提案がなされることは、多々あると考えられます。
昨今の被ばく関連のニュースで、日本国民は諸外国に比べて病院での放射線検査に良いイメージを持たれていないと感じます。
それは被ばくに関する正しい知識を持たれていないことに一因しているのではないでしょうか。
今回は読者の皆様が、もしもCT検査を受けた際に自分で自分がどのくらい被ばくしたのかを計算できる知恵を教授し、検査に対する不安が小さくなるための一助となればと思います。
目次
1.そもそも被ばくとは
定義を文章化するのは幾分難しいということでありますのでWikipediaを参照したいと思います。
被曝(ひばく、radiation exposure)とは、人体が放射線にさらされることを言う[1]。「曝」が常用漢字でないことから「被ばく」とも表記される。
つまり病院での被ばくとは『患者様』が『検査機器からの放射線』にさらされるということを指します。
2.CT装置における被ばく線量表示
世界中をみても日本ほどCTを設置している国はないという事実を皆様にまずお伝えします。
単純に考えて世界に比べ日本はCT検査が多くなることはわかりますよね。
そのことから今回はCT検査に絞ってお話をしたいと思います。
そもそもCTとは、検診等で行うレントゲン撮影をぐるっと一周させて、コンピュータを用いて輪切りの画像を作り出す機械です。
そしてCT装置はどの程度患者様に被ばくをさせたかを簡便に把握できるように、検査が終了したら、その検査でどの程度被ばくしたかの情報を提示することができるようになっています。
そこでさまざまな値が出てくるのですが、その時の検査における被ばく線量を直接計算するにはDLP(Dose Length Product)という値が重要になってきます。
基本的にDLPを用いていわゆる被ばく線量を計算していきます。
3.実効線量変換係数による被ばく線量算出
実際に被ばくした値は実効線量という値を用いて評価しています。
算出方法を以下の通りに示します。
実効線量=DLP×実効線量変換係数
ここで実効線量変換係数という項がでてきました。
この値はICRP(国際放射線防護委員会)と言われる組織からの勧告で提示された値となります。
体の部位別に定められており、一覧は以下の通りです。
ではここで次のような事例を想定して計算してみましょう。
交通事故により頭部を軽く打撲、CT検査となりました。
CT検査後、撮影をした診療放射線技師に質問しました。
患者『今回の検査でのDLPはいくつだったのでしょうか』
放射線技師『1350mGy・cmでした』
患者『そうですか、ありがとうございました』
検査の清算を待合室で待っている間に実際に計算してみます。
患者『今回DLPは1350で、ICRPによる実効線量変換係数は頭部は大人だと0.0031ということなので、実効線量は1350×0.0031=4.185(単位はmSv)と計算できるね』
4.被ばくによる影響とは
このようにして被ばく線量を算出することができます。
そして実際に今回例で示した頭部に対する4mSvという値は多いのか少ないのか。
そこが大事ですよね。
実際に被ばくした際に起こりうる影響として2つあります。
その2つが確定的影響と確率的影響です。
簡単に言うと、確定的影響とはある決まった量以上被ばくすると、確実に出現する影響で、確率的影響はある決まった量が無く、被ばくした量とともに発生するリスクが上昇する影響と言えます。
確定的影響には脱毛や一時不妊等があり、確率的影響にはガンが挙げられます。
そしてどちらともにあてはまることは
100mSvを超えないと放射線被ばくによる影響は出てこない
ということです。
正しく言い直すと確率的影響は100mSv以下の被ばくによる影響はわかっていないと言われております。
これは長崎、広島の原爆被害からの研究で分かったこととです。
ちなみに私たちは普通に暮らしていても年間2.4mSv程度被ばくしていることも知られています。
5.まとめ
いかがだったでしょうか。
放射線被ばくについての知識を得ることができ、少しは不安が減りましたか?
DLPがいくらだったのかを実際に検査後に質問をすればすぐに教えていただけます。
気になる方は検査後に医師、看護師、放射線技師、事務員等に質問をしてみて下さい。
さらに今回提示しました実効線量変換係数の一覧はjpegで上げていますので、保存をしてスマートフォン等に潜ませておけば、いざというときに役立つのではないかと思います。
正しい知識をつけて正しく放射線を恐れるように、今後も勉強を続けていくことが大事ですね。